大規模修繕で見直したい、給排水管の更新工事の重要性

 マンションの大規模修繕工事は、建物の美観や耐久性を保つために欠かせないイベントですが、意外と見落とされがちなのが「給排水管」の劣化問題です。給排水設備は普段目にする機会が少ないため、つい後回しにされがちですが、老朽化が進めば漏水事故や水質悪化といった深刻なトラブルに直結します。築年数が進むマンションでは、大規模修繕のタイミングで給排水管の状態をしっかり見直し、必要に応じた更新工事を計画することが、住環境の安全性と資産価値を守る大切なカギとなります。

1.なぜ大規模修繕のタイミングが重要なのか?

 マンションの大規模修繕工事は、一般的に12~15年周期で行われます。給排水管の寿命は、材質にもよりますが概ね30~40年と言われており、築20年以上のマンションでは給排水管の劣化が問題化しているケースが多く見られます。大規模修繕工事は足場設置や共用部の改修などが一度に行われるため、このタイミングで給排水設備も点検・更新を検討することで、二重工事や後戻り工事を防ぎ、工事コストの削減につながります。

2.劣化を放置すると起きるリスク

 給排水管の劣化を放置すると、以下のようなリスクがあります。

◆漏水事故(階下への水漏れ被害、損害賠償問題)
◆赤水や異臭(飲用水としての品質低下)
◆水圧低下(シャワーや給湯器の使用に支障)
◆配管詰まり(排水の逆流、悪臭発生)

 特に漏水事故は、一部の住戸だけでなく建物全体に被害が及ぶため、対応が遅れるほど修繕費用が高騰するリスクがあります。

3.更新方法の種類

 給排水管の劣化状況によって、主に以下の工事方法が選ばれます。

◆配管更新(取り替え):古い配管を撤去し、新しい配管に交換する
◆配管更生(ライニング):既存配管内に樹脂を流し込み、内面を補修する
◆バイパス配管:既存配管を使用せず、新たな配管ルートを設ける

 更新が最も根本的な解決策ですが、コストや施工期間に応じて更生やバイパス工法を組み合わせる例も増えています。

4.大規模修繕との同時実施メリット 

◆足場設置費用を節約(単独工事より数百万円単位でコスト減)
◆住民負担の軽減(生活制限が一度で済む)
◆建物全体の維持管理計画を最適化(長期修繕計画との整合性)
◆資産価値維持・向上(老朽リスクがないマンションとして評価)

 特に管理組合の長期修繕計画に給排水更新を組み込んでおくと、突発的な高額負担を防ぎ、資金準備をスムーズに進めることもできるでしょう。